インド紀行⑤①
バラナシへは例のイスラエル人の女の子ふたりと一緒に来た。
安宿のおじさんが別々の部屋にするかと訊くと、Tは同じ部屋でいいと言った。
曰く、イスラエル人同士の旅行者の間では男女で同じ部屋をシェアすることが普通だからと言うことだった。
私はその時点で何も気づかなかったのだが、感の鋭い人間ならTが内心なにを望んでいたかにピンと来たハズだ。
それは真夜中に起きた。
私はふくらはぎに何かが振れるのを感じた。
さすりさすりと。
はて?
私は30分くらい様子を見た。
しかし、それは一向に止まなかった。
まさかと思った私は暗闇の中、隣に眠るTに小声で話しかけた。
すると、「なに?」という素っ気ない返事が返って来たので、私は「いや。何でもない。勘違いしたわ」と言った。
「勘違いじゃないわ」とTは言った。
「わたし、あなたのことが好きなの」
鬱状態だった私の世界はいっきに天国へと変わった。
(続く。。。)