インド紀行⑥①
どういうル〜トを通ったかは忘れたが、我々はインド大陸の真ん中を突っ切って北上した。
だから、当然、他には旅行者などいなかった。
いい経験だったが、今になって考えるとかなり危険な行為である。
運がよかったのか、さして危険な目には合わなかった。
ひとつだけあるとしたら、安宿に泊まったものの宿泊費の交渉で話が決裂して、朝になると我々は宿泊費を払わず走って逃げた。
幸いにもそこはインド。
警察も何も追いかけては来なかった。
インドは無法地帯である。
警察なんか頼りにならない。
兎にも角にも、わたしはデリ〜へ戻った。
どこかでそのカナダ人の女の子とは別れたので一人であった。
冬のデリ〜は寒かった。
夜寝るときにはブランケットが必要だった。
お正月をデリ〜で一人で迎えることになったのだが、わたしは部屋に籠ってジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロ〜ド」を読んだ。
やたらとインドを放浪する旅行者の間で話題だった本である。
たまたま、日本から短期間だけインドに来た大学生がその本を持っていたので、わたしは彼からそれを買ったか何かした。
むちゃくちゃ読みたかったからだ。
だが、読んでみると期待していた程にはよくなかった。
詳しい内容は忘れたが主人公がアメリカ大陸を放浪するというもので、社会からドロップ・アウトしていない人間には刺激的なのかもしれないが、インドまで来て長期滞在していたわたしの場合、刺激的な体験どころか日常であった。
デリ〜から何処へ行くかは決めていなかった。
ビザもあと3ヶ月は残っていたので、いようと思えばまだインドにいられた。
しかし、北から南まで一通りインドを旅行して廻ったので、タイへと行くことにした。
(続く。。。)