インド紀行②⑧
インドにまでやって来る旅行者たちは皆、何かしらの問題というかトラウマを抱えている人が多かった。
ベトナム帰還兵のファビオもそうだった。
おそらく、ベトナムで見た光景は忘れたくても忘れられない地獄だったに違いない。
一度、リズからファビオが話したがっていると言われたので、ファビオの部屋まで行ったことがある。
私の愛読書がサリンジャ〜の「ライ麦畑でつかまえて」だということを知ったファビオが興味を持ったらしい。
ひと通り「ライ麦畑でつかまえて」について話を終えた私は、ウッドストック・フェスティバルにファビオが行ったか否かを訊いた。
すると、寂しそうに「あの3年間はすべてベトナムにいたよ。。。」と言った。
そして私をファ〜スト・ネ〜ムで呼ぶと、「悪いけど昼寝をさせてもらえるかな?」とドアを閉めた。
キョトンとする私。
独りバルコニ〜にいると、リズが「ファビオはどうしたの?」と驚いたふうに訊いてきた。
だから、私は「ファビオ、昼寝したいんだって」と答えた。
リズに怪訝そうに、「○○(私のファ〜スト・ネ〜ム)。あなた、何を話したの?」と訊かれたので、ベトナム戦争のことだと言った。
「ダメじゃないの!○○!ファビオにとってはベトナム戦争のことはトラウマなんだから!」
それから数週間後、ファビオは皆に伝えていた日よりも1日早くひっそりとダラムサ〜ラを去った。
お別れパ〜ティ〜を準備していた女の子たちは唖然としていたが、私は驚かなかったしリズにしてもそうだったに違いない。
(続く。。。)